酔虎の独り言 〜本とロックと酒の日々〜

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zoom RSS 学校の怪談 〜湖の女〜

<<   作成日時 : 2010/05/08 17:52   >>

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 連休の合間の
 木金
 生徒もだれている

 そこで
 毎年恒例の
 やったよ
 怪談話

 今日はその一部をご紹介
 話ではなく
 文章にしたやつだ
 もちろん
 オレのオリジナル

 霊視能力のある
 雅夫君
のお話です

 どうぞ

 雅夫は中学校に進んで写真部に入った。
 もともと運動はあまり好きではなかったし、第一、危険すぎた。
 野球をしていて「彼ら」に気を取られてボールを受け損ね、メガネを割ったことがあったし、1対1のスポーツでも、相手の肩にいる「彼ら」が気になってまるで集中できないのだった。
  このころになって雅夫は、「彼ら」の余りの数の多さに驚き始めていた。
 とにかくどこにでもいるのだ。
 人々の肩の上、腰の当たり、教室のスミ、天井のあたり・・・
 一度など、友達に借りたマンガの中に住み着いている奴−猫だった−がうるさくて、全然読めずに返したこともあった。
 そして「彼ら」は雅夫の意思とは関係なく見えたり見えなかったりするので、全く予期しないときに現れてびっくりすることもしばしばだった。
 雅夫の様子が変なことに気づいた友人達が、自分にはどんな「彼ら」が憑いているのか聞きたがったが、説明しようとするととたんに像はぼやけ、つかみ所がなくなった。
 最初は面白がった友達も、だんだん気味が悪くなったのか、雅夫を変人扱いして相手にしなくなった。
 大人達はもっと露骨に雅夫を遠ざけた。
 曰く、
 「妄想癖がある。」
 「すぐ嘘をついてごまかす。」・・・
 病院に入れたら、と言う人までいた。
 先生や両親まで自分を変な目で見るようになったのに気づいて、雅夫は「彼ら」について話すのを一切やめた。
 そして人付き合いが少なくなるのと反比例して、見えてくる「彼ら」の数は増してくるのだった。

 雅夫はいつも1人でいることが多くなり、やがて数えるほどしかいなかった友人達も去った。
 孤独が彼の代名詞となった。
 雅夫が写真部を選んだのにはもう一つ訳がある。
 それは、彼にしか見えない「彼ら」をなんとか像に収めたかったのだ。
 しかしそれはなかなかうまくいかなかった。
 確かにいるはずの方向にカメラを向けてシャッターを切っても、そこにはよくてうすぼんやりとした白い煙のようなものが写っているくらいで、ほかはまったくただの写真だった。
 そのうち、写真部の先輩達に、意味のない写真ばっかりとっていると怒られるようになって、しばらくは「彼ら」の撮影は断念することになった。
 ところが夏休みのある日、親戚のお兄さんの剛が来て、雅夫をドライブに連れ出した。
 いつも部屋に閉じこもって本を読んでばかりいる雅夫を心配して、母親が頼んだのだった。
 一人っ子の雅夫は友達がいなくなってからは、図書館から借りてきた怪奇文学や異常現象などの本を読み漁る日が続いていた。

 家から車で1時間ほど山に入っていくと、観光名所ともなっている湖があった。
 湖畔を巡る道路をとばすと、うっそうと茂った木々の間から除く真っ青な空ときらきらした木漏れ日が目にまぶしく、窓を開けると、長くなった髪を後ろにたなびかせる気持ちの良い風が雅夫の心を軽くし、久しく忘れていた開放的な気分にさせるのだった。
 湖を見おろす高台の展望台にいくと、すでに何組かの観光客が来ていた。雅夫達の他はみな男女のカップルで、体をぴったりとくっつけ合って楽しそうに話をしている。
 雅夫と剛も崖っぷちの柵の所まで行って湖をのぞき込んだ。
 空の青に負けない明るくはっきりしたブルーの水面に、ちりばめたガラスの破片のような陽光が乱反射して、うっとりするような眺めだった。
 湖につきだしたような半島とその山の中腹の緑の間に見える赤い鳥居。
 ゆっくりと湖面を揺らして行き過ぎる連絡船。
 雅夫は久しぶりにカメラのシャッターを、実体のあるものに向けて切った。
 ふと気づくと、剛は湖ではなく駐車場の方を見つめている。
 不思議に思ってそっちを向くと、案内板の脇のベンチに、つばの広い真っ黒な帽子をかぶり、じっと遠くに視線をやっている女の人が目に入った。
 「剛兄さん、何見てるの。」
 雅夫が聞くと、剛は傍目にも分かるほど驚いた様子で、
 「な、なんだ急に、何でもないよ。」
 顔を赤らめ、明らかに狼狽している。
 「こんなガキとじゃなく、女の子でも誘って来るんだったな、って思ってるんでしょ。」
 「そんなんじゃねぇよ。ほら、あの人、さっきからじっと湖見てるけど何か変じゃない?
 夏だってのに真っ黒い服着ちゃってさ。」
 確かに、その女の人は周囲から浮いていた。
 誰かを待っているのか身じろぎ一つしない。
 ときおりまばたきする他はまったくの無表情で、きれいにそろえた膝の上にはハンカチをもった細長い手があり、そこだけが黒いワンピースから浮かび上がるようにくっきりと白かった。
 「あんなきれいな人が一人で何してんだろ。
 あっ、剛兄ちゃん、もしかして声かけようとか思ってる?
 俺、一人じゃ帰れないよ。」
 「そんなんじゃないって。
 何かイヤな感じがするんだよ。
 ここ、自殺の名所だろ。」
 「えっ、自殺?」
 「そう、この湖って、底の方で水流があって、なかなか死体が上がってこないんだって。
 そんで水温が低いから腐らないで保存されちゃって、何年も経ってから突然、死んだときのままの姿で浮かび上がったりするんだって。」
 「やめてよ、そんな話。」
 「へへっ、お前、幽霊見えるんだろ?
 その割に臆病だな。
 なにか見えたのか?」
 「もう、帰ろう!!」
 「あっ、怒った怒った。」
 事実、剛が自殺の話をし始めたら、
 「彼ら」が見えだしていた。
 せっかくのドライブだったのに、気分が台無しだ。

  帰りの車中でも雅夫は不機嫌なままだった。
 剛がなにか話しかけても、生返事をするだけで、後はカメラのファインダーを覗いたままだった。

 展望台から10分ほど走ったところで、雅夫が不意に声を上げた。
 「剛兄ちゃん、あれ見て!!」
 さっきの女の人だった。
 展望台の切り立ったがけの上にすっくと立っている。
 帽子はとばされ、長い髪が顔を隠すようになびいている。
 そして次の瞬間、彼女は飛んだ。

 声を出すヒマもなかった。
 急いで車をUターンさせ、展望台に行ってみると、そこには誰もいなかった。
 彼女は誰かを待っていたのではなくて、
 誰もいなくなるのを待っていたのだった。

 「剛兄ちゃん・・」
 雅夫が泣きそうな声を出した。
 「何だよ、とにかく警察に知らせよう。」
 「とっちゃったんだよ。」
 「何を?」
 「さっき、あの人が飛び込む瞬間を・・・」
 「何だと?」
 「だって、剛兄ちゃん、喜ぶかと思って・・・そしたらいきなり飛びこむんだもん・・・」
 「えっ、さっきのを写真に撮ったのか?」
 「うん。」
 「そいつはすげぇ、証拠写真だ。
 すぐ警察に行こうぜ。
 もしかしたら、高く売れるかもよ、その写真。」

  警察では、簡単な事情聴取をされた後、迎えに来た両親と家に帰った。
 現像した写真は見せてもらえなかった。
 失恋が動機の単純な自殺と判断されたようだった。

  家に帰ると父の忠が雅夫を呼んだ。
 いつになく渋い顔をしている。
 雅夫は怒られるのかと思ったが、そうではなかった。

  忠は2人きりになると、雅夫に茶色の封筒を示した。
 あの、飛び込みの瞬間をとった写真だ。
 「これな、公式の証拠としては使えないそうだ。」
 「どうして?」
 「まあ、見てみな。」
 忠は苦り切った表情で雅夫の前に2葉の写真を放った。
 写真は遠景で黒服の女の人が髪を広げてまっ逆さまに飛び込む様をはっきりと映し出していた。

 そして、湖からは彼女を引き込むように、無数の白い手が伸びていたのである。

 事件から1ヶ月が過ぎた。
 雅夫は事件のことは一切他言しなかった。
 写真もあれからは撮っていない。
 学校では相変わらず、目立たないようにして生活していた。
 心なしか、この1月は「彼ら」も雅夫の前に姿を現す回数が減っていた。

 四十九日に当たる日、雅夫と剛は花束を買って湖を訪れた。
 自分たちも少しは関わった事件なので供養に行こうと思ったのだ。
 死体はもちろんあがっていなかった。

 湖畔はあの日のように晴れ上がっていたが、木の葉はちらほらと黄や朱色がまじり始めており、何より風がもう十分に秋を感じさせた。
 例の展望台に行って花束を供えた。
 すでに幾つかの花束や線香があげられていた。
 手を合わせた後、手すりによって湖を眺めてみた。
 あの時の明るい青とは違う、冷たい蒼色の湖面が拡がっていた。

 この湖から手がいっぱい出ていたんだよな・・・。

 思い出すと、またなんだか肌が粟立つような気がした。
 剛も同じ思いだったのか、
 「帰ろうか・・・」
 言葉も少なに立ち去ろうとしたとき、ふと雅夫は湖を振り返った。

 そこには、湖いっぱいの大きさの、真っ白な女の顔が、無表情に雅夫を見上げていた。


 

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
怖いお…(´;ω;`)
U
2010/05/08 21:29
メール下さい(´-ω-`)笑
IKM
2010/05/08 21:59

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